原著・吉田修一さん
文・絵・三国史明さん
【国宝 2巻(既刊3巻)】

あらすじ・漫画紹介・感想
はじめに
ヤクザの親分だった父親が殺され、組から追い出された喜久雄は〝歌舞伎役者・花井半二郎〟に引き取られ、歌舞伎役者を目指すことになりました。
半二郎の1人息子・俊介と共に、日々稽古に励みます。
そんなある日、半二郎から『地方巡業で主役の女形二人』をそれぞれやるように言われた、俊介と喜久雄。
〝ずっと歌舞伎と生きてきた自分〟と〝歌舞伎のかの字も知らずにやってきたヤクザ者〟
──────揺れる俊介。
国宝 2巻あらすじ
【第8話】〜【第15話】まで掲載されています。
半二郎の直感通り、花井半弥(俊介)と花井東一郎(喜久雄)の『二人道成寺』は大盛況となり、チケットは即日完売。
当日券を求める人の大行列ができるほどの人気ぶりでした。
丹波屋は、半二郎の『曽根崎心中』の舞台も控えており、慌ただしい日々が続きます。
そんな中
半二郎が交通事故に遭ったと突然の知らせが届きました。
俊介と喜久雄は慌てて病院へ駆けつけ、
女将から『命に別状はない』と聞き安堵しますが、すぐに厳しい現実を突きつけられます。
怪我の具合が深刻で、来週からの舞台には立てないというのです。
2歳の頃から歌舞伎に全てを捧げてきた半二郎の代わりをつとめられるのは
〝血筋の者だけ〟
俊介の母であり、女将の幸子は俊介に
『心の準備だけはしておいたほうがよい』
と声をかけました。
その矢先…一本の電話が鳴ります。
「あんな
お父ちゃんの代役な
喜久ぼんでいくらしいわ」
花井半二郎が何よりも重んじていたのは
『〝血筋〟ではなく〝才能〟だったのです。』
おわりに
今回の場面を読んで強く感じたのは、歌舞伎の世界の厳しさと、その中で生きる人たちの心の揺れです。
半二郎が事故で舞台に立てなくなるという事態は、本人にとっても家族にとってもつらい出来事のはずなのに、その瞬間に『誰が代役を務めるのか』という現実的な判断を迫られるのが、〝芸の世界だ!!〟だと思いました。
俊介は母である女将から『心の準備を』と告げられ、俊介自身も父の代わりを務めるのは、血筋を背負う者として当然の役目だと信じ、女将もまた息子が舞台を守るのは仕方のないことだと考えていた…。
ところが、実際に代役に選ばれたのは喜久雄。
電話でその知らせを受けた瞬間、俊介と女将の胸に「ありえない」という思いがよぎったはずです。
血筋が重んじられる世界で、なぜ自分ではなく、喜久雄なのか───。
俊介には悔しさと戸惑いが、女将には母としての無念さが入り混じり、簡単には受け入れられなかったでしょう。
それだけではなく、血筋である俊介が世間になんと言われるか半二郎はわかっていたはずです。
それでも、半二郎が何より重んじていたのは『血筋ではなく才能』でした。
その信念に向き合ったとき、二人は納得できない気持ちを抱えながらも受け入れざるを得ませんでした。
むしろその葛藤があるからこそ、俊介の胸に残った悔しさや、女将の複雑な思いは決して無駄にはならず、これから舞台に立つときの原動力となるはず…だった。
今までライバルらしいライバルもおらず、将来を約束されてきた俊介は、俊介なりに歌舞伎に人生を捧げてきました。
初めての悔しい屈辱は『人生を変えてしまうほどの出来事』となり、この後、俊介だけでなく丹波屋の未来を大きく変える出来事に繋がります。
読み終えたあとに残るのは、受け継いでいかなければならない歌舞伎という伝統芸能の厳しさと葛藤で、半二郎の「才能を信じる」という決断は、単なる代役選び以上の意味を持ち、未来へ大切なバトンを託す行為のように思えました。
俊介と女将の葛藤も…
喜久雄の驚きと葛藤も…
そのすべてが重なり合って、この場面をより深く心に迫るものにしています。
もしも自分が女将さんの立場だったら…
いくら旦那が決めた事だとしても、認めることはできるだろうか…。
今まで自分がしてきたことは間違っていたのか…
自分の命より大切な息子が見捨てられた…
めちゃくちゃ色んな事を考えて、苦しくて苦しくて耐えられないと思います。
まだ国宝は始まったばかり
このあと俊介と喜久雄はどう生きていくのか…
タイトルの〝国宝〟とは何を指すのか…
最後まで追いかけていきたいです。
本日もお立ち寄りありがとうございました🙇✨
