原著・吉田修一さん
文・絵・三国史明さん
【国宝 3巻】
あらすじ・漫画紹介・感想
はじめに
〝血筋〟か〝才能〟か
『死に物狂いで耐えていた俊介』
『死に物狂いで前に進もうとしていた喜久雄』
芸道を守ることは容易くない、いばらの路。
俊介は置き手紙を残し
喜久雄と将来を約束したはずだった春江と共に姿を消したのでした────。
国宝 3巻あらすじ
【第16話】〜【第23話】まで掲載されています📖
俊介が居なくなった丹波屋では、今朝も俊ぼんの朝ごはんが用意され、皆俊ぼんの帰りを待っています。
なかでも母である女将さんは、夜も寝れず、ご飯も食べれず、日に日にやつれてしまいます…。
長崎から大阪に喜久雄を追いかけてきた幼馴染の徳次が旅に出てから、俊介と春江も居なくなり、三人がどれだけ大切な存在だったかあらためて気付かされる喜久雄。
一方、病院に無理を言って退院した半二郎は
『俊介がいなくなった責任は自分にある』
と来月の舞台での復帰を決めました。
さて、現在道頓堀座で公演中の喜久雄は
〝日に日にお客さんが少なくなっている〟ことに気が付き、さらには雑誌の記事でも酷評され『そんなワケあるか!』と怒ります。
いよいよ半二郎の復帰の舞台も幕開けです。
喜久雄は何を感じ何を思うのか────。
『役者なら何があっても
芸で勝負するしかあらへんで』
おわりに
今回の3巻は、まさに『血筋か、才能か』というテーマが色濃く描かれていたように思います。
俊介が丹波屋を去ってしまったことで、周囲の人々の心にぽっかりと穴が空いたような喪失感が広がっていきます。
特に女将さんの姿には胸が痛みました😢
母として、役者として生きる息子を信じたい気持ちと、帰ってこない現実の間で揺れる姿…。
俊介がいなくなったのは、俊介が決めた事。
足掻くことなく逃げたのは俊介。
わかりたくないけれど、ずっと丹波屋と自分の息子の未来のため頑張ってきた女将さんだからこそ、そんなことはわかっている。
けれども喜久雄が来なければこんなことにはならなかった。
俊介の未来は安泰だった。
喜久雄さえ居なければ…。
同じ子をもつ親として、女将さんの葛藤が一番心に残りました。
俊介を信じたい一方で、舞台の世界に生きる厳しさも理解しているからこその苦しみ。
その想いが作品全体をより深くしています。
また、喜久雄の前に立ちはだかる現実は、決して才能だけでは乗り越えられない壁ばかり。
実の息子俊介ではなく、選ばれた喜久雄は世間からの注目もあり、過度な期待の高さからお客さんの減少や酷評される記事…舞台の世界がいかに厳しいかがリアルに伝わってきます。
俊介がいなくなったことももちろん大きな出来事ですが、それ以上に
〝芸で生きるとはどういうことなのか〟
という問いを喜久雄が突き付けられているように感じました。
そして、半二郎。
責任を背負い、体がまだ本調子でないにもかかわらず舞台復帰を決める姿には、役者として父親としての執念と覚悟がにじみ出ています。
彼の復帰の舞台を、喜久雄がどう受け止めるのか────今巻の大きな見どころです。
『役者は何があっても芸で勝負するしかない』
という言葉は、まさにこの物語全体を貫くメッセージのように感じました。
生まれ持った血筋か─
生まれ持った才能か─
それを決めるのは結局〝芸そのもの〟であり、舞台でしか証明できないのだと。
3巻は登場人物それぞれの苦悩が交差し、物語がさらに深まっていく大切な巻だと思います。
次巻では喜久雄がどんな成長を見せるのか、俊介はいつか帰ってくるのか…。
続きが待ち遠しいです😊
本日もお立ち寄りありがとうございました🙇✨